2018-11

2018・11・4(日)メノッティ:「電話」「泥棒とオールドミス」

      ザ・カレッジ・オペラハウス  2時

 アメリカの作曲家ジャン・カルロ・メノッティ(1911~2007)のオペラは、かつて東京室内歌劇場が活動していた頃にはいくつか観られたものだが、最近ではなかなかその機会がない。
 今回は2作ダブル・ビルの上演だというので、福岡での九響取材と組み合わせて訪れた次第。大阪音楽大学の第54回オペラ公演、昨年から開始された「ディレクターズチョイス」シリーズの第2弾である。

 電話で長話に耽る恋人に結婚申し込みがなかなか出来ない男が、ついに奇策を思いつくというストーリーの「電話」(今回は「テレフォン」と表示)。
 もう1作は、突然流れ込んで来たイケメンの物乞いの男(大泥棒の脱獄者だという噂もある)に惚れ込み、自らも泥棒を働いてしまった挙句に裏切られるという気の毒な女性が主人公の「泥棒とオールドミス」。
 ━━この明るいコミカルな内容の作品2作を組み合わせ、粟国淳が要を得た演出で爽やかにまとめ上げ、森香織指揮のザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団が演奏した。英語上演の字幕付き。

 主要スタッフは、新垣弘志(舞台美術)、村上まさあき(衣装)、原中治美(照明)。歌手陣は、「電話」が石橋栄実(ルーシー)、晴雅彦(ベン)。「泥棒とオールドミス」が児玉祐子(ミス・トッド)、中嶋康子(レティーシャ)、西尾岳史(ボブ)、田邉織恵(ミス・ピンカートン)。

 粟国淳のこの演出は、極めてストレートなタイプで、シンプルで洒落た雰囲気を備えたものである。歌手たちには、アメリカ人のような身振りとメイクと衣装を設定しているが、それがあまり不自然なバタ臭さ(?)を感じさせなかったのは、演出の良さと歌手たちの力でもあろう(ただしドアのノックは、二つだけ叩くのはおかしいのでは?)。
 電話機はレトロなダイヤル式の固定電話を使っているが、ここでは昔ながらの電話のベルが重要なモティーフとなっているから、これは仕方がない(欧州の演出家なら遠慮なく現代のケータイの音にすり替えたろうが)。

 舞台美術と衣装は極めてカラフルなもの。「電話」で、ベンがルーシーにかける公衆電話は、背景の幕(遮断板)が上がった高所にある。また「泥棒とオールドミス」でのイケメンの「脱走犯」らしき男が泊めてもらっている「2階の部屋」も、上下する幕で仕切られた後方の高所に設定されている。いずれも要を得た適切な舞台づくりだ。

 歌手たちがみんないい。英語の発音は、日本のオペラ歌手たちは一般的に苦手といわれているが、今日の人たちはなかなかよかったと思われる。
 「電話」での石橋栄実と晴雅彦は、これはもうベストの顔ぶれ。堂に入った見事な歌唱と演技で、音楽と舞台とを一分の隙もなく陽気に盛り上げてくれた。

 「泥棒とオールドミス」における出演者も同様、児玉祐子と田邉織恵は中高年の独身女性を賑やかに歌い演じ、西尾岳史も正体不明の青年ボブを爽やかに表現していた。
 出色だったのはレティーシャ役の中嶋康子で、最初は調子のいい可愛いメイドと見えた女性が、最後には怪しげな色気を見せてボブを唆し、主人ミス・トッドの財産を盗んでクルマで逐電するに至る変化を、巧く歌い演じていた。
 かように今回の舞台は、演出と演技が見事に均衡を保っていたといえよう。

 指揮者の森香織は、この2作の音楽をよくまとめていたが、特に「電話」では、もう少し歯切れのいい、軽快で洒落たリズムがオーケストラから引き出されていればさらによかったろうと思われる。
 20分の休憩を含め、4時10分頃終演。ザ・カレッジ・オペラハウス、昨年の「偽の女庭師」(モーツァルト)に続く成功作だ。
   (別稿)モーストリー・クラシック新年号 公演Reviews

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