2018-09

2018・9・22(土)ひろしまオペラルネッサンス「イドメネオ」

      JMSアステールプラザ大ホール  2時

 広島日帰りで、「ひろしまオペラルネッサンス」の公演、モーツァルトの「イドメネオ」(2回公演)の初日を観に行く。
 新幹線で品川から片道3時間50分。オペラの上演は3時間半ほどだから、往復の電車に乗っている時間の方が長い。

 「イドメネオ」は、これが広島では初めての上演だという。
 下野竜也の指揮する広島交響楽団がピットに入り、演出は岩田達宗、美術デザインは増田寿子。
 ダブルキャストの今日は、矢野勇志(クレタの王イドメネオ)、八木寿子(王子イダマンテ)、小林良子(トロイアの王女イリア)、小玉友里香(ギリシャの王女エレットラ)、孫勇太(イドメネオ王の側近アルバーチェ)、安藤省二(海神ネプチューン)、下岡輝永(大司祭)。ひろしまオペラルネッサンス合唱団。

 岩田達宗の演出の意図は、戦争というものの悲惨さや、その後遺症に苦しむ人々の存在、それらを愛の力によって克服すること━━などを描くことにあったと思われる。彼らしく細かに作られた舞台ではあったものの、しかし人物の動きの点では、イドメネオとアルバーチェ以外の演技に様式的なスタイルが感じられたため、ドラマトゥルギーが明確に伝わって来たとは必ずしも言い難いようだ。折々イリアやエレットラが突然飛び出して来るという必然性も、少々解り難い。

 だが第3幕では場面転換に工夫が凝らされていたし、エレットラの怒りのアリアを終幕の劇的な頂点とした構成も印象に残る手法だった。またラストシーンでは、新王イダマンテの登場を慶ぶ群衆と、寂しく去り行くイドメネオ及びそれを痛ましげに追うアルバーチェの姿とを対比させたのも感動的だったであろう。

 歌手陣では、女声3人が、未だ線が細いところもあり、未完成な部分も多いとはいえ、それぞれ健闘していた。小林良子は清楚な声でいくつかのアリアを美しく歌い、八木寿子は安定した声と表現力で第3幕での死の決意を毅然と力強く歌い上げた。
 小玉友里香は最初の2つの幕ではエレットラを美しく歌ったが、最後の聴かせどころの激しいアリアでは、もっとドラマティックな要素が欲しいところで━━特に終結近くのクライマックス個所は「可憐に過ぎ」た。だが、演技との組み合わせからすると、もしや当初から「哀愁のエレットラ」を求めていたのか? 

 ついでに申し上げておくと、エレットラとイリアの衣装がほぼ同じなので、遠目には少々区別がつきにくかったことは事実である。
 また、「海の怪物」は、照明によって暗示されただけで、実物はついに出て来なかった。それもいいかもしれない。昔、故・実相寺昭雄監督の演出(小澤征爾指揮)で、ウルトラマンに出て来るような変な怪獣が突然現れ、客席を爆笑させたのが今でも記憶に残っているので━━。

 下野竜也と広島交響楽団が、清楚で、しかも力のこもった、引き締まったモーツァルトを聴かせてくれた。彼と広響の相性は良いように感じられる。10月定期を聴きに行ってみよう。

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