2018-07

2018・7・29(日)PMF GALAコンサート

      札幌コンサートホールkitara  3時

 郡山市内、前夜からの雨もあがって、大きな虹が出た。それでもやはり暑い。
 早朝、福島空港に向かう。相当な距離だ。とにかく9時45分のANA1113便に乗って、11時15分に新千歳空港に着く。札幌市内はすでに快晴、こちらも猛烈に暑い。札幌の夏は爽やかで快いなどという話は、もう過去のものになったのか。

 7月5日から始まっていた恒例のPMF(Pacific Music Festival)の、今日は札幌でのファイナル・コンサート。3時に開演し、7時に終演するという盛り沢山のプログラムだ。

 第1部では、マルタン・グレゴリウス(kitaraの専属オルガニスト)による即興演奏に続き、天羽明惠がバーンスタインの「キャンディード」からの「着飾ってきらびやかに」を歌い、PMFアメリカのメンバーがハイドンの「弦楽四重奏曲ニ長調Op.50-6」第4楽章を演奏し、PMFヴォーカル・アカデミーのメンバーがヴェルディの「トロヴァトーレ」からの「ルナ伯爵とレオノーラの二重唱」と、ベルリーニの「ノルマ」からの「和解の二重唱」を歌い、休憩を挟んで、安楽真理子(METオーケストラ)がドビュッシーの「神聖な舞曲と世俗的な舞曲」を演奏し、最後に田中カレン編曲の「PMF賛歌」(ホルストの「木星」の編曲)が聴衆の大合唱で歌われるという具合である。

 このうち、オルガン・ソロと室内楽および以外ではダニエル・マツカワ指揮のPMFオーケストラが協演、最後の「賛歌」だけは、PMF芸術監督ワレリー・ゲルギエフが指揮していた。
 安楽真理子のドビュッシーは、賑やかなフェスティヴァル中における一服の清涼剤のように美しい。また、オペラの二重唱を歌ったヴォーカル・アカデミーの4人は、ルナ伯爵がインコン・チェン、レオノーラがソルア・ユー、ノルマが水野亜美、アダルジーザがニル・リウという顔ぶれで、ここPMFではガブリエッラ・トゥッチ(懐かしい!)の指導を受けたそうだ。みんな声が美しく、研鑽を積めば充分に伸びる人たちではないかと思う。
 ただ、ダニエル・マツカワの指揮に明快なリズム感が著しく不足しているため、音楽の構築性や、特にオペラではたたみかけるリズム感などが生まれず、ソリストたちは、多分持てる力の半分も発揮できなかったのではないかと思われる。

 第2部が始まったのは5時ちょうど。こちらはゲルギエフが指揮するPMFオーケストラの本格的な演奏会だ。
 1曲目に予定されていたモーツァルトの「オーボエ協奏曲」が、ソリストのユージン・イゾトフ(サンフランシスコ響首席)が手を怪我したため、ヴェルディの「シチリア島の夕べの祈り」序曲に変更になった。量感はあったものの鷹揚な演奏で、演奏会の幕開けの景気づけ程度といった感だったが、広島(31日)東京(1日)の公演でも取り上げられるのであれば、ゲルギエフの指揮だし、しっかりしたアンサンブルになって行くだろう。

 バーンスタインの「ハリル」は、デニス・ブリアコフ(ロサンゼルス・フィル首席)の見事なフルート・ソロと、弦楽を中心とした小編成のオーケストラの音色の柔らかさもあって、静謐で叙情的、かつ瞑想的な曲想が、この上なく美しく再現されていた。何人かの知人が「まるでタケミツ!」と感嘆していたのもむべなるかな、という気がする。

 後半のマーラーの「交響曲第7番《夜の歌》」は、驚異的な素晴らしさだった。練習回数もそうは多くなかったはずだし、アンサンブルもそれほど完璧ではなかったにせよ、音楽が決して無機的にならず、しかも楽章を追って演奏が精度を増し、フィナーレの燃え立つような熱狂に導かれて行ったのは、さすがゲルギエフというほかはない。

 何より感心させられたのは、この交響曲の演奏にとかくありがちな散漫さに陥らず、中間の3つの楽章と終楽章とがさほど大きな落差を生むことなく、実に自然に結びついていたという印象を生んでいたことであった。第4楽章のあとにアタッカで開始されたフィナーレのティンパニの爆発への移行も自然であり、所謂「躁鬱症的な、異常な感情の揺れ」を━━良いか悪いかは別として━━ほとんど露呈させなかったのである。

 フィナーレのテンポは、これまでナマで聴いたいかなる演奏よりも速く、疾風怒濤といった趣だったが、オーケストラは、それはもう巧かった。ティンパニのデイヴィッド・ハーバート(シカゴ響首席)の妙技は圧倒的だったし、トランペット群も爽快な響きで、過度に大きな音量になることなく、しかも明快強烈に、鋭く存在感を主張していたのだった。この演奏は、広島、東京と公演を重ねて行くうちに、さらに磨かれて行くだろう。

 終演は予想より早く、7時となった。第1部での客席は7~8割の入りだったが、さすが第2部ではほほ満席。
 夜になると、空気も少しは爽やかになった。「リッチモンドホテル札幌駅前」に泊。

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