2018-07

2018・7・16(月)東京二期会 ウェーバー:「魔弾の射手」ゲネプロ

      東京文化会館大ホール  5時

 今週は東京文化会館で上演される東京二期会制作の「魔弾の射手」を、A・Bキャスト併せて2回、次いで西宮の兵庫県立芸術文化センターで上演が始まる同劇場制作の新演出「魔弾の射手」をA・Bキャスト併せて2回、取材することになっている。
 それに先立っての今日のゲネプロだから、「魔弾」は計5発ということになる(7発だったら最後の1発はヤバイことになるが、5発なら安全圏内だろう)。

 で、こちら東京二期会のは、あのペーター・コンヴィチュニー演出版によるものだ。18日から4回上演される。
 ピットに入ったのは読売日本交響楽団で、今日のゲネプロでも、予想通り安定した厚い響きを聴かせてくれた。また、アレホ・ぺレスの指揮が速いテンポで煽るように飛ばして行くタイプなので、このオペラの音楽の良さが、本番では小気味よく堪能できそうだ。

 実際このオペラには有名なフシが多いし、ドイツ・ロマン派の真髄ともいうべき神秘的な美しさにも事欠かない。ワーグナーがこの「魔弾の射手」の音楽にいかに多くのものを負うているか、それを聴きとるのも面白さの一つである。
 問題は、セリフまわしなのだが・・・・いや、これは初日の幕が開いてからにする。

 歌唱はもちろんドイツ語だが、そのセリフは日本語。字幕は日本語と英語(!)が付き、日本語の台詞にも英語の字幕が付く。外人観客対応の措置だ。
 原作は3幕制だが、今回は第1幕と第2幕を切れ目なしに上演、スペクタクルな見せ場「狼谷の場面」のあとに休憩が入る。

 演出は、基本的には、あのハンブルク州立劇場上演のライヴ(DVDが出ている)と同じではあるものの、細部は随所に違いがある。特に第3幕は、まさにコンヴィチュニーぶしともいうべき独自の解釈の連続だ。今日はコン様は、一度最後まで上演してから、すべての部外者を強権で(!)客席から退去させ、しかるのちにダメ出しを行なっていた(はず)。

 なお、今回はコン様の提案で悪魔ザミエルを女性が演じるということも大々的にPRされており、元宝塚のトップスター大和悠河が、さすが宝塚出身ともいうべきカッコいい舞台姿を見せる。セリフもある。この「宝塚的悪魔」は、さまざまな姿で随所に登場するので、それを眺めているだけでも楽しい。
 その上、第3幕で悪魔の分身として舞台に現われるヴィオラ奏者ナオミ・ザイラーも映えるから、今回は悪魔の女性2人が見ものということにもなるだろう。

2018・7・16(月)アラン・ギルバート指揮東京都交響楽団

     サントリーホール  2時

 アラン・ギルバートの首席客演指揮者就任披露公演、シューベルトの「交響曲第2番」と、マーラーの「交響曲第1番《巨人》」。

 アランは、都響とは2011年7月(☞17日の項)のブラームスの「第1交響曲」における快演以来、相性のすこぶる良い関係にある人だ。従って今日も、それを知る聴衆から温かく迎えられ、限りない拍手をも浴びていた。演奏も、極めて張りと活気にあふれる充実したもので、新ポストでの滑り出しも上々と思われる。

 「巨人」は、プログラム冊子のタイトル頁に、「今回の演奏楽譜は当初ユニバーサル社ウェブサイトを参照し『1893年ハンブルク稿/花の章付き』と発表しましたが、スコアの表記に従って『クービク新校訂全集版/2014年』と呼称します」とクレジットされている。
 やっぱりそうだろうな、という感だったのは、以前、ヘンゲルブロックが北ドイツ放送響と日本でこれを演奏した時(☞2015年6月4日)にも、「これはハンブルク稿とはいっても、第2ハンブルク稿のようなものじゃないのか」という話が広まっていたからだ。そう、思い出したがこの版は、山田和樹も日本フィルとのマーラー・ツィクルス第1回(☞2015年1月24日)で演奏したことがあった。

 幸い今回は、それについての寺西基之さんの詳細で解り易い解説がついているので助かる。要するに、同じ「━━稿」とひとくちに言っても、当該演奏会直後における作曲者本人による手直しなどがいろいろあるから、甚だややこしくなるのだ。

 で、この演奏、耳に馴染んだ所謂「現行版」と比べながら聴くと、その違いがとてつもなく面白い。管弦楽の扱いも、整理された現行版よりも、もっと濃厚で、野性的で荒々しく、時には雑然としていて、マーラーの最初のアイディアはこうだったのか、と興味が尽きない。以前どこかで聴いた「第1ハンブルク稿」と比べても、なるほどここはこのように手直ししたのか、と感心させられる。

 アラン・ギルバートの指揮は、やや速めのテンポで、しかも昂揚個所ではアッチェルランドを多用して煽りまくるから、テンポやエスプレッシーヴォに関しては、スコアに指定されているのか、それとも彼の解釈なのか、当該スコアを未だ入手していない私には判然としかねるけれども、少なくともオーケストレーションの差異に関しては、「ダイヤの原石」的な味を堪能することができる。

 矢部達哉をリーダーとする都響も熱演を聴かせてくれた。金管のソロの一部には不安定な個所があったものの、木管群は冴えて鋭いソロを聴かせ、第1楽章序奏における舞台裏でのトランペット群とホルン群(!)は爽快な音色のファンファーレを響かせた。「第4楽章」冒頭のコントラバスのソロ━━この稿では、チェロではない━━も巧い。若きマーラーの気負いと情熱とを見事に再現させた演奏と言っていいだろう。

 ただし、当然ながら、アンサンブル構築の完成度としては、第1部におけるシューベルトの「第2交響曲」の方が、ずっと上だったろう。
 そこでは、強固に引き締められた構築のうちに、分厚く剛直な、時には少し物々しいほどの力を漲らせたシリアスなシューベルトが、ダイナミックに進んで行く。アラン・ギルバートは、マーラーの遠い先駆という位置づけでシューベルトを捉えていたのかもしれない。
 それと同時に、アランのこの厚い豪壮な音づくりは、いかにも8シーズンにわたりニューヨーク・フィルの音楽監督として君臨した指揮者の志向を窺わせるものでもあった。

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