2018-06

2018・6・30(土)調布国際音楽祭 フェスティバル・オーケストラ

       調布市グリーンホール 大ホール  6時

 サントリーホールでハイドン・フィルの演奏会を聴いてから、地下鉄銀座線の溜池山王駅から赤坂見附で丸ノ内線に乗り換え、更に新宿駅から京王線準特急に乗れば、調布駅までたいした時間はかからない。

 その調布駅前にある「グリーンホール」を中心に開催されている「調布国際音楽祭」は今年で6年目、ただし「国際」の2文字が加わったのは昨年からとのこと。エグゼクティブ・プロデューサーは鈴木優人である。
 演奏会のプログラムは、彼や鈴木雅明、寺神戸亮らによる古楽系を中心としているようだが、フェスティバル全体としてはもちろん市民たちも参加できる幅広いイヴェントをも含んでいる。

 今日、私が聴いたのは、「フェスティバル・オーケストラ」と題する演奏会だ。鈴木雅明の指揮で、バッハの「管弦楽組曲第3番」、ストラヴィンスキーの組曲「プルチネッラ」、ベートーヴェンの「交響曲第5番《運命》」がプログラムに組まれている。
 コンサートマスターは、バッハが寺神戸亮、他の2曲が白井圭。各パートには瀧村依里、須田祥子、上野星矢、広田智之、福士マリ子、今井仁志らの名手が首席などとして並んでいる。そしてうしろのプルトには「お弟子さん」(受講生)たちも加わっていということだが、その詳細は聞き洩らした。

 そういうオケだから、素晴らしく良いところと、ちょっと危ないところとが混在する演奏にはなっていたけれども、「プルチネッラ」では各セクションが見事な演奏を繰り広げて、聴き応えも充分だった。
 ベートーヴェンの「5番」は、ティンパニがあまりに雑で粗っぽい叩き方をするのにうんざりし、耳を覆いたくなったほどだが、それを除けば、熱意と奮闘の甲斐のある演奏だったと言えようか。ただ第4楽章は、いかなる基準に照らしてもテンポが速すぎ、オーケストラに乱れを生じさせていた。これは、単なる「気魄」では片づけられぬ問題だったろう。

 最初のバッハの組曲は、演奏は少々荒かったが、マーラーの交響曲を2日間続けて聴いたあとでは、何と気持よく聴けたことか。演奏云々以前に、バッハの音楽の美しさに、暫し陶然としてしまったほどである。

 ホールは築後約40年、席数は約1300。アコースティックは悪くない。ロビーは狭く、ごった返すが、この音楽祭には温かい雰囲気がある。エグゼクティブ・プロデューサーみずからロビーに出て、ボードに「グッズ(あります)」などと書いたりしていたほどだ。この良き手づくりの感、何ものにもかえがたい。

2018・6・30(土)アルトシュテット指揮ハイドン・フィルハーモニー

      サントリーホール  2時

 暑いさなかに分厚いマーラーの交響曲が2日間も続いたあとでは、小編成のピリオド楽器オーケストラの演奏で聴くハイドンの作品は、あたかも清涼剤のような爽やかさに感じられる。しかも演奏が、実に素晴らしい。

 このオーケストラは、1987年にアダム・フィッシャーにより設立されたオーストリア・ハンガリー・ハイドン・フィルというアンサンブルがその前身とのこと。2016~2017年のシーズンに、ニコラ・アルトシュテットが芸術監督に就任し、名称表記も「ハイドン・フィルハーモニー」とした由。
 現在は本拠地をハイドンゆかりのアイゼンシュタットのエステルハージ城内のハイドン・ザールに置き、編成は45名だそうである。ただし今回来日したのは30名程度だ。

 今日は日本ツアー最終公演。プログラムはいずれもヨーゼフ・ハイドンの名作で、「交響曲第92番《オックスフォード》」、「チェロ協奏曲第1番」、「交響曲第94番《驚愕》」、アンコールが「交響曲第88番」の終楽章。
 アルトシュテットの生気溢れる演奏構築と、オーケストラの完璧な技術とで、極めてしっかりした、充実の演奏を繰り広げてくれた。素晴らしい指揮者とオーケストラである。

 例えば「驚愕」の第2楽章の演奏では、第16小節の例の最強奏の「一撃」だけ目立たせるのではなく、第49小節からのフォルテの個所も鋭いフォルティッシモで響かせ、5小節後のピアーノとの対比を明確にする。その他の個所でもしばしば強弱を鋭く際立たせる。
 つまり「驚愕」の意味を、単なる一発の悪戯にとどめるのではなく、楽章全体におけるデュナミークの鋭い対比として捉えているのだ。これは非常に興味深く、面白いアプローチである。

 2階ロビーには、エステルハージ家から借りて来たとかいうハイドン関係の貴重な資料が数多く展示されていた。自筆の楽譜だけでなく、ハイドンの契約書、給与明細書、領収証明書の類などまでずらりと。━━こんな面白い資料展示があるなら、もっと大きくPRすればよかったものを。
 開演前に一覧して愉しかったので、休憩時間はごった返すだろうから終演後にもう一度ゆっくり見ようと思って客席から出たら、何と、もうあとかたもなく撤収されてしまっていた。

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