2018-06

2018・6・12(火)フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮レ・シエクル

      東京オペラシティ コンサートホール  7時

 サントリーホールでのプレトニョフとロシア・ナショナル管の「イオランタ」も聴きたかったのだが、斬新な演奏で最近注目の指揮者とオーケストラということで、敢えてこちらを選ぶ。

 1971年パリ生れの指揮者フランソワ=グザヴィエ・ロトと、フランスのオーケストラ「レ・シエクル Les Siècles」が演奏する、ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」と「遊戯」、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」、ストラヴィンスキーの「春の祭典」━━これはもう、ふるいつきたくなるようなプログラムだ。

 今回の「春の祭典」のユニークな演奏については、プログラム冊子に掲載された池原舞さんと佐伯茂樹さんの解説が大いに参考になる。
 ロトが復元した初演時の(ものに限りなく近い)スコアに基づき、20世紀初頭のパリで使用されていた楽器を多く使用してのこの演奏は、ふだん私たちが聴いている現行の「改訂版」(複数)で聴くのとは随分異なった、時には仰天するような違いがある。

 一部のデュナミークの逆転や、声部のバランスの変更による意外な響きには、ロトの独自の解釈が全く入っていないとは言えないだろう。だが、「春のロンド」のさなかにおける大きな休止や、「神聖な踊り」の中で突然最弱音になる個所や、カットしたのかと仰天させられるような一、二の個所などが、すべて初演時のスコアに基づくものだったという解説を読むと、ただもう驚くばかりである。

 そしてこの、旧い管楽器による鋭角的な音色で再現されたスコアの響きの、何という強烈さ。
 この曲が、あまりの刺激的な音によってパリの観客の理性を失わせたという噂は、それが「当たり前のように演奏される」ことの多い現代から見れば、いかにも昔話のように感じられてしまうのだが、こういう楽器で、このように演奏されると、「春の祭典」の驚異的な前衛性は、初演から100年を過ぎた今でも、まだまだ衰えていないのだということが実感できるのである。

 「ラ・ヴァルス」も、強烈かつ兇暴(?)な力を噴出させる演奏だった。これは版の問題というより、ロトの解釈とこのオーケストラの独自の音色によるものかもしれないが、この圧倒的な音楽は日頃聴き慣れている「ラ・ヴァルス」とは全く異なり、極めて挑戦的な作品に感じさせる。
 「牧神の午後への前奏曲」も、豊麗で官能的な夢幻の世界を描くような演奏ではなく、はるかに鋭い。「遊戯」に関しても同じようなことが言えよう。
 とはいえ、それらの鋭角的な演奏の中にも、この2人の作曲家がもつ、あの独特の雰囲気が保たれているのは、紛れもない事実なのだが。

 いずれにせよ、このロトとル・シエクルの演奏は、甚だしく刺激的であった。それはちょうど、あのジョン・エリオット・ガーディナーが30年近く前にオルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティークを率い、わが国初のピリオド楽器によるベートーヴェンの交響曲全曲ツィクルスを披露した演奏と同じような衝撃の━━。

アンコールには、ビゼーの「アルルの女」の「アダージェット」が演奏された。終演した時には、9時半になっていた。

※(コメント「なお」様へのお答え)
 1992年に来日し、サントリーホールでベートーヴェン・ツィクルスを演奏したのが、その「オルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティーク(ORR)」です。これは、同じくガーディナーが指揮していた「イングリッシュ・バロック・ソロイスツ(EBS、イギリス・バロック管弦楽団)」とは、「狙いも主張も異なる」別のオーケストラです。ただしORRのその初来日時(66人編成)には、それより3年前に来日した時のEBS(33人編成)のメンバーが12名含まれていました。
 当時は招聘マネージャーにもその2団体の違いが明確に把握できていなかった(あるいはPR戦略上、無視した)ようで、チラシや公演プログラム冊子に両方の名称が載っていたため、みんな混乱させられたものです。「音楽の友」1992年12月号をお持ちでしたら、グラビアの拙稿をお読み下さい。

※「たかし」様 上海公演ではバレエ付きだったのですか。それは羨ましい。しかし、音楽だけでも凄まじいものでしたよ。

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