2018-06

2018・6・2(土)ウェルザー=メストとクリーヴランド管弦楽団の
ベートーヴェン交響曲ツィクルス「プロメテウス・プロジェクト」

     サントリーホール  6時

 6月7日までの5回にわたるツィクルスの第1回。
 音楽監督フランツ・ウェルザー=メストも意欲満々、プログラム冊子の交響曲の曲目解説も自分で書き、「プロメテウス・プロジェクト」に関してのエッセイも載せるという力の入れようだ。

 今回は、交響曲全9曲にそれぞれ序曲1曲ずつを組み合わせる━━「第9」(7日)の日のみは序曲だけでなく「大フーガ」━━ほか、4日目(6日)には休憩後の「田園」のあとに「《レオノーレ》序曲第3番」を演奏するというユニークなプログラミングが行なわれている。第1回の今日は、最初に「プロメテウスの創造物」序曲、続いて「第1交響曲」が、休憩後に「英雄交響曲」が演奏された。

 この序曲と「1番」とを組み合わせるのは、先日の尾高忠明と大阪フィルも採った手法だが、今回は明確に「プロメテウス・プロジェクト」というプログラムへの序としての意味が持たせられていたのだろう。
 ただ、それにしては、始まった演奏は余裕たっぷり、力を抜いた柔らかい表情で、どうもこの演奏からは、あの大胆な神、人類に力をもたらした神に因む気魄のイメージは伝わって来ない。

 続く「第1交響曲」も、どちらかというとソフトな組み立てである。いずれも音色は極めて美しく、あたたかい。これがあのクリーヴランド管かと思われるような響きが印象的ではあったが━━しかしこういう演奏は、若きベートーヴェンが満々たる意欲を籠めたその最初の交響曲としての性格を考えると、いかがなものか?

 休憩後の「英雄」では、弦16型・倍管という大編成となり、オーケストラの響きもやや硬質で鋭くなって、演奏の表情も戦闘的に変貌する。作品の性格からしてそれは納得の行くものだ。この曲のみ天皇・皇后両陛下の御臨席があったから、演奏する方もリキが入っていたかもしれない。
 演奏は推進力充分ではあったし、均衡の豊かな響きのうちにも内声部の動きが明確に聴き取れるほど━━特にチェロの明晰な音色が素晴らしい━━見事な音の構築ではあったのだが、さて、すべてを聴き終ったあとに、心には何が残ったか?

 ウェルザー=メストといえば、一昨年のザルツブルク音楽祭でウィーン・フィルを振った、それはもう見事なほど毅然として感情も豊かな「フィデリオ」を聴いて、この人もついに凄い指揮者になったか━━と、聴いていた知人と一緒に喜び合った(?)ことがあるのだが、演奏会の指揮者としては、どうも以前とさほど変わっていないような気がする・・・・。

«  | HOME |  »

Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

最近の記事

カテゴリー

全記事表示

全ての記事を表示する

RSSフィード

ブログ内検索

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」