2018-02

2018・2・17(土)日本オペラ協会 團伊玖磨:「夕鶴」

     新宿文化センター 大ホール  2時

 定番の出しもの。主催と制作は日本オペラ振興会。

 園田隆一郎が東京フィルを指揮して、実にまとまりのいい演奏を聴かせてくれた。オーケストラのバランスも響きも上々、全体に仄かな暗い音色で悲劇的なイメージを描き出し、各モティーフを明確に浮き彫りにする。殊更に劇的な激しい起伏を施さない控えめなつくりではあったが、この時代の團伊玖磨独特の抒情性は充分再現されていたと思う。こういう演奏で聴くと、このオペラは、やはりいい。

 歌手陣は、明日とのダブルキャストで、今日は佐藤美枝子(つう)、中井亮一(与ひょう)、柴山昌宣(運ず)、泉良平(惣ど)に、こどもの城児童合唱団、という顔ぶれ。

 演出は岩田達宗、舞台美術は島次郎。この書き割り的な舞台装置には、ちょっと寂しい感もあるが━━近年は鍋も釜も囲炉裏もないシンプルな抽象的な舞台(市川右近演出)や、「雪の幻想」的な舞台(新国立劇場の栗山民也演出)など、所謂「日本の農村風景」から離れた斬新な舞台も現われて来ている時代だし━━まあしかし、岩田達宗らしく温かい演出は随所に観られた。

 特に後半、運ずの与ひょうに対する同情と労わりを前面に強く押し出していたのが印象的だったし、惣どが織り上がった「布」を与ひょうから強奪するなどの手荒い演出がなかったのにもほっとした。幕切れ近く、つうと遊ぼうと集まって来た子供たちが、つうの代わりに奥から惣どがぬっと現われたのを見て、ぎょっとしてたじろぐという演出は、細かいことだが、なかなかよかった。

 所謂「涙もの」の人気定番だけあって、客の入りは上々だが、大半が女性客、そして圧倒的に高齢者という客席である。それはそれで結構ではあるものの、家族連れを除けば若い世代の客がほとんど見当たらないのには暗然とする。
       ☞別稿 音楽の友4月号 演奏会評

«  | HOME |  »

Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

最近の記事

カテゴリー

全記事表示

全ての記事を表示する

RSSフィード

ブログ内検索

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」