2017-09

2017・9・14(金)上岡敏之指揮新日本フィルハーモニー交響楽団

      サントリーホール  7時

 新日本フィルの新シーズン開幕定期は、音楽監督・上岡敏之の指揮で、ベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第4番」(ソロはデジュ・ラーンキ)とマーラーの「交響曲第4番」。コンサートマスターは崔文洙。

 コンチェルトでの上岡と新日本フィルの、陰影のあるふわっとした音━━往年のチェリビダッケの音づくりを思い出させるが、もちろん同じではない━━も悪くなかったが、やはり面白かったのは、両者が全力を挙げたと思われるマーラーの「5番」だった。
 これはもう、マーラーがスコアに書き込んだ目まぐるしいばかりの指示を、更に極端なまでに強調した演奏である。デュナミークも、テンポも、音色さえも、いっときたりとも落ち着くことなく、不断に変化する。アクセントさえ聴き手の予想を上回り、時には裏切り(?)、強調される。

 第1楽章など、悠然たる葬送行進曲などでは決してなく、常に不安定な精神を描き出したような演奏だ。ゆっくり話していたかと思うと、突然猛烈な早口になる。終結近くのフォルテ3つの個所など、まさに哀しみの激情が堰を切ってヒステリックに暴発するというイメージの演奏ではなかったか?━━ここは、今日の「上岡のマーラー」の中でも、象徴的な個所だったと思われる。

 とにかくこれは、神経質で、呻吟や歓びや、悲哀や絶叫などが絶えず交替して行くという、あの精神分析的なマーラーの音楽を赤裸々に再現した演奏と言えるだろう。そういうマーラー演奏は、著しく聴き手を刺激し、音楽にのんびり浸っていることを許さない。
 上岡の指揮が個性的であることは、私たちはから以前から心得ているが、そのユニークさが何処から生まれたものであるかをじっくりと考えさせられる好例が、今日の「5番」の演奏ではなかったろうか?

 指揮者のこういう主張を、新日本フィルが今日のように巧く表現できるようになっているというのは、両者の呼吸が合って来た証明であろう。開幕第1弾定期としてそれが示されたのは、ありがたいことであった。
 これでもう少し、アンサンブルが緻密になり、ホルンやトランペットが肝心の聴かせどころでポロリとなることがなければ、文句ないのだが━━。

«  | HOME |  »

Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

最近の記事

カテゴリー

全記事表示

全ての記事を表示する

RSSフィード

ブログ内検索

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」