2017-03

2017・3・19(日)東京・春・音楽祭 シャーガー&バイチ

      東京文化会館小ホール  7時

 トリフォニーホールのある錦糸町から上野までは、秋葉原乗換のJRで、ほんのわずかの時間だ。この移動距離なら、ダブルヘッダーも容易い(数年前、川崎━横浜━上野とトリプルをやったことがあったが、あれはさすがに疲れた)。

 恒例の「東京・春・音楽祭」が、この16日から華やかに始まっている。
 これは、テノールのアンドレアス・シャーガーと、ヴァイオリンのリディア・バイチとのデュオ・コンサート。それにマティアス・フレッツベルガー指揮のトウキョウ・ミタカ・フィルハーモニア(旧称トウキョウ・モーツァルト・プレーヤーズ)が協演するという演奏会である。

 アンドレアス・シャーガーは、最近、人気沸騰中だ。日本でも同様。
 今回も「(プログラムは)何をやるんだか判らなかったけど、シャーガーが出るということでチケットを買った」と言う人もいたくらいで、━━それもあってか、彼の出番ではホールが沸き返る。

 ワーグナーの「ヴェーゼンドンク歌曲集」は、未だ陰翳に不足する彼の歌唱と、官能的な雰囲気を欠く指揮者とオーケストラの演奏のために、あまりサマにならぬ結果にとどまったけれども、「魔笛」や「ジプシー男爵」、「ジュディッタ」、「J・シュトラウス2世のテーマ」、アンコールでの「ヴァルキューレ」、「メリー・ウィドウ」などでは彼の闊達なフル・ヴォイス全開で、客席を沸き立たせた。
 聴き手の耳をビリビリいわせる馬力だったが、まあいいだろう。それに例の如く、聴衆にアピールする華やかな、明るいジェスチュアとステージマナーがいい。

 そのシャーガーに対し、いくら美女でもヴァイオリン一挺のリディア・バイチはちょっと分が悪く、拍手の音量もシャーガーに対するそれよりは少し小さめなのは気の毒だったが、しかし、特に第2部でのリストの「ハンガリー狂詩曲第2番」やクライスラーの「ウィーン奇想曲」と「愛の悲しみ」、アンコールでのモンティの「チャールダシュ」、レハールの「ワルツ」などでの演奏は、美しく魅惑的だった。

2017・3・19(日)大友直人指揮群馬交響楽団 東京公演

     すみだトリフォニーホール  3時

 国内のメジャー・オーケストラの中で、充分な実力がありながら音響的に不満足なホールを本拠地にしているもう一つのオーケストラが、この群馬交響楽団である。
 今回は、トリフォニーホールの3階席で聴いてみたが、実に豊かな響きであり、堂々たる風格の音だ。
 プログラムは、千住明のオペラ「滝の白糸」序曲、チャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」(ソリストは萩原麻未)、ラフマニノフの「交響曲第2番」。コンサートマスターは伊藤文乃。

 圧巻は、やはりラフマニノフの「2番」である。
 この曲はマエストロ大友の定番というか、極め付きの十八番というべき交響曲だ。その演奏に舌を巻いた最初は、もう20年も前のことで、あれは東京交響楽団を指揮して━━たしかCDにもなっていたのではないか? 
 この日の演奏も、非常に密度の濃い快演だった。憂愁と、郷愁と、甘美さと、豪壮さとを兼ね備えたもので、特に全曲の山場たる第3楽章(アダージョ)は、それに相応しい情感の豊かさをもった演奏だった。最後の最弱音が消えて行くあたりも、絶妙である。
 音楽監督・大友直人と群響との協同作業が好調であることを感じさせる演奏といえたであろう。

 第1部での2曲━━チャイコフスキーの協奏曲では、オーケストラと、萩原麻未のダイナミズムと叙情的な優しさとを併せ持つソロとが、アゴーギクの点で必ずしも調和しているとも感じられなかったが、いっぽう「滝の白糸」序曲では、日本的でトラディショナルな、耳当りの好い曲想を丁寧に再現した演奏で、3年前に聴いた全曲舞台上演の際の演奏よりも、遥かに音楽の美しさが感じられた。

 それにしても群響に、日常の定期を音響の良いホールで開催できる時が一日も早く訪れるよう願ってやまない。だが2年ほど経てば、高崎に新しいホールが竣工される由。ただし、客席2千ほどの、パイプオルガンのない大ホールだとか。音響設計が永田音響であることに期待をかけよう。

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