2017-03

2017・3・13(月)インバル指揮ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団

      すみだトリフォニーホール  7時

 ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団(旧東独時代のベルリン交響楽団)の現在の首席指揮者はイヴァン・フィッシャーだが、今回は、かつての首席指揮者エリアフ・インバルとの来日だ。プログラムは、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデからの「前奏曲と愛の死」、マーラーの「交響曲第5番」。

 日下紗矢子さんのこのオケのコンサートマスターとしての雄姿(?)を見られたのは嬉しいが、残念ながらそれはワーグナーにおいてのみだった。マーラーでは別の男性がコンマスを務め、日下さんはトップサイドで弾いていた。

 で、大いに期待されたこのオケの公演であったが、━━インバルの指揮にしては、意外に音が粗い。「トリスタン」での音の硬さなど、呆気にとられるほどで、「愛の死」の頂点にいたっては、ただ大きな音が雑然と響くだけで、愛の陶酔も何も感じられない。
 聴いた席は22列中央近く。このあたりは、金管が強く響いて来て音が硬く聞こえるというのは、以前にも経験したことだ。上層階━━3階席とか、左右のバルコン席の上部あたりなら、こんなに刺激的な音には聞こえないはず。

 ただいずれにしても、このオーケストラは、アンサンブルを含めての技術的な部分には鷹揚なところがある。ただしそれを、あの巨大な空間を持つベルリンのコンツェルトハウス(旧シャウシュピールハウス)で聴くと、陰翳と大らかさを伴った不思議な味をもって拡がって来るのだが・・・・。
 来週、東京芸術劇場で「巨人」を聴いてみれば、もう少し詳しく判るだろう。

 そんなわけで、「トリスタン」はすこぶる落ち着かない印象に終始したが、19列で聴いた(この移動は、許可を得ての業務上のものです。念の為)マーラーの「5番」では、弦楽器群がもう少し強く浮かび上がって、オーケストラの音にも奥行感が生じ、内声部もかなり明確に聴き取れて、演奏も多彩なものに感じられるようになった。
 第3楽章でのホルンの活躍も劇的に味わえたし、第4楽章の「アダージェット」でも柔らかい空間的な拡がりが堪能できる。

 特に第2楽章からあとは、インバル特有の剛直な音楽づくりが冴え、実に見事な演奏になった。フィナーレのコーダ近く、これでそのまま頂点へ━━と思わせておきながら、突然勢いが落ちて行く例の個所(第581小節から)では、凡庸な指揮者の手にかかると「未だ終らないのかよ」などという印象を生んでしまうものだが、さすがインバルはそのあたりの設計が巧い。少しも緊張感を失わせず、再び最後の昂揚へ全軍を率いて突き進んで行った。
 このように、ひたすらクライマックスへ追い上げて行くインバルの指揮には、相変わらず凄味が漲っている。コンツェルトハウス管弦楽団も、鮮やかにそれに応えていた。

※コメントにつき☞前日の項

※この件に関するコメントが次第に荒れて来たので、本意ではありませんが、19日正午以降のご投稿分6通を削除させていただき、「以上」といたします。議論には節度を。

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