2011-05

5・12(木)アラベラ・美歩・シュタインバッハー・ヴァイオリン・リサイタル

   東京文化会館小ホール  7時

 遠くから見れば楚々たる美女、近くで見れば妖艶な・・・・それはともかく、今日はブラームスの3つのソナタ。
 2番、1番、3番の順に並べられたプログラムで、アンコールにはブラームスの「スケルツォ」(例のF,A.E.ソナタからの)と、クライスラーの「愛の悲しみ」が演奏された。
 ピアノはいつものパートナー、ロベルト・クーレック。

 コンチェルトを演奏する時には、常にきりりと引き締まった毅然たる気品を示す彼女だが、今日はとりわけ端正かつ優麗な演奏。くっきりと隈取りされた美しい音色、正確なテンポ、落ち着きのある表情が印象的であった。
 ブラームスの叙情が、あふれるばかりのカンタービレで浮彫りにされていて、美しい。ただしそこには思いのほか陰翳というものがなく、常に明るい光に満ちた歌になっていて、それがブラームスの音楽を聴く上で、一種の物足りなさを感じさせる原因なのかもしれない。

 しかし、そうした端麗な音楽づくりの裡にも、「第3番」のフィナーレなどでは、こみ上げる感情の高まりをついに抑え切れず、決然たる昂揚に達して行く。昔の人がよく謂う「初めは処女の如く、終わりは脱兎の如し」か。
 彼女はコンチェルトの演奏の時によくそういうスタイルを採るが、このような一夜のリサイタルにおいても、プログラム全体にそのような構築設計による形式感を導入するとみえる。如何にも知性的だ。

 それにしても、身のこなしからして如何にも落ち着いて気品があり、悠揚迫らざる表情で端正な演奏をしていた美女ヴァイオリニストが一転、次第に激しい気魄を示しつつ直截剛直で切り込むような音楽をつくって行く「変身」の様子は、何か凄まじい迫力を感じさせる。聴衆の拍手は曲を追って高まり、「第3番」のあとでは、客席は沸きに沸いた。

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