2009-08

8・31(月)シュトックハウゼン「グルッペン」

   サントリーホール

 10日間近くワーグナーの濃厚なオペラに浸かっていた耳に、リゲティやシュトックハウゼンの「音」は、異様なほど新鮮に響く。

 サントリーホールの1階客席の前半分の、上手側と下手側3分の1ずつを潰して櫓を組み、下手側に第1オーケストラ(パブロ・ヘラス=カサド指揮)、上手側に第3オーケストラ(クレメント・パワー指揮)が乗り、中央メイン・ステージに第2オーケストラ(スザンナ・マルッキ指揮)が位置する。こうして演奏されるのが、シュトックハウゼンの「グルッペン」だ。
 オーケストラはN響。弦・管の他に多数の打楽器が必要だし、しかも著作権使用料、楽譜使用料、舞台制作費なども含めれば、随分カネがかかったことだろう。これは、サントリーホールの「サマーフェスティバル2009」最終日、サントリー音楽財団40周年記念公演である。

 20分足らずの曲だが、オーケストラのテクスチュアは緻密で、聴感上の内容も頗る濃い。52年前――当時29歳のシュトックハウゼンの大胆気鋭ぶりが、今なおなまなましく伝わって来る作品だ。
 聴く位置によって3群のオーケストラのバランスが異なって聞こえるのを愉しむため、休憩を挟んで2回演奏されるこの曲を、聴衆は席(自由席)を移動して聴くことができる。
 そのため、バランスよく聞こえそうな席を取り合って殺到する客たちで、休憩時間の通路はラッシュアワー並みにごった返した。私も最初2階C席で聴き、後半はP席をねらっていたのだが、途中で名刺を出して挨拶される方などに捉まっているうちに、P席はとっくに埋まってしまった。仕方なく、LA席の最後列にやっと空席を見つけて座る。

 近距離にあるオーケストラの音がやはり強く聞こえるため、聴く場所によって、まるで別の作品のように聞こえるのが面白い。2階C席後方では3群のオケの豊麗な溶け合いが聴けたが、二度目はオケに近い位置だったので、鋭角的な音のスリルが楽しめた。3人の指揮者がアイ・コンタクトを駆使し、呼吸を計って指揮する光景も、実に興味深い。

 前座(?)に演奏されたリゲティの「時計と雲(Clocks and Clouds)」(1973年作品)も良い。こちらはマルッキ指揮のN響で、東京混声合唱団の女声12人が参加する。解説には冒頭がテリー・ライリーの「イン・C」に似ていると書いてあったが、なるほどそんな感じもあり――70年大阪万博の鉄鋼館でその日本初演を聴いた時のことをふと思い出した――ただしこちらリゲティのは、音程の動きが逆だ。ミニマル・ミュージック的で、女声が微妙にずれながら繰り広げて行く幻想的なサウンドが神秘的で快い。

 広島のN.Wさんから、29日の「芥川作曲賞」も含めてのコメントを頂戴しました。妙に批評ぶらない、非常に率直な感想なので、読んでいても愉しく痛快です。ありがとうございました。

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