6・13(土)シュテファン・アントン・レック指揮東京交響楽団
マーラー「悲劇的」
サントリーホール 6時
NHKホールでの演奏はちょうど5時に終ったが、渋谷近辺でデモに引っ掛かり、しかも信号機が故障したらしく道路は麻痺状態。やっと渋谷を抜け出たのが5時33分、青山通りを10分で飛ばして、何とか6時からの東響定期に滑り込む。
前半でシューマンの「チェロ協奏曲」を弾いたダニエル・ミュラー=ショットの、清潔で豊潤な表情がいい。ただでさえ長いプロのオーケストラの定期で、ソロ・アンコールを2曲(ラヴェルの「ハバネラ形式の小品」とブロッホの「祈り」――いずれも無伴奏)もやるのはどうかと思うが、しかしこの演奏がまたすばらしく瑞々しかったのである。
その協奏曲で、やや低徊趣味の、アナログ的な(?)伴奏をしたレック。
この調子でマーラーの巨大な第6交響曲「悲劇的」をやられたら、と腰が引けたが、案に相違して強いアタックの、鋭いリズム感を備えた演奏が開始された。第1楽章は「躁状態」のマーラーそのものといった感だったし、第2楽章も極めて引き締まったスケルツォとなっていた。
ただ、第4楽章は――かなり精緻に仕上げられてはいたが――もう少し劇的に起伏のある「闘争性」があってもよかったのでは、と思う。長いプログラムで、さすがの東響も息切れしたか? レックは総じて、両端楽章で何度も現われるあのイ長調からイ短調へ瞬時に変わるモティーフを、それほど重要視していないように感じられる。
客席は満席に近い。今日のお客さんは、いろいろな意味で、すばらしかった。
NHKホールでの演奏はちょうど5時に終ったが、渋谷近辺でデモに引っ掛かり、しかも信号機が故障したらしく道路は麻痺状態。やっと渋谷を抜け出たのが5時33分、青山通りを10分で飛ばして、何とか6時からの東響定期に滑り込む。
前半でシューマンの「チェロ協奏曲」を弾いたダニエル・ミュラー=ショットの、清潔で豊潤な表情がいい。ただでさえ長いプロのオーケストラの定期で、ソロ・アンコールを2曲(ラヴェルの「ハバネラ形式の小品」とブロッホの「祈り」――いずれも無伴奏)もやるのはどうかと思うが、しかしこの演奏がまたすばらしく瑞々しかったのである。
その協奏曲で、やや低徊趣味の、アナログ的な(?)伴奏をしたレック。
この調子でマーラーの巨大な第6交響曲「悲劇的」をやられたら、と腰が引けたが、案に相違して強いアタックの、鋭いリズム感を備えた演奏が開始された。第1楽章は「躁状態」のマーラーそのものといった感だったし、第2楽章も極めて引き締まったスケルツォとなっていた。
ただ、第4楽章は――かなり精緻に仕上げられてはいたが――もう少し劇的に起伏のある「闘争性」があってもよかったのでは、と思う。長いプログラムで、さすがの東響も息切れしたか? レックは総じて、両端楽章で何度も現われるあのイ長調からイ短調へ瞬時に変わるモティーフを、それほど重要視していないように感じられる。
客席は満席に近い。今日のお客さんは、いろいろな意味で、すばらしかった。
6・13(土)準・メルクル指揮NHK交響楽団 「夏の夜の夢」他
NHKホール マチネー
前半がジャン・フレデリック・ヌーブルジェをソリストに迎えたベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第1番」。この若い(23歳)ピアニストは近来屈指の注目株だ。ベートーヴェンの若い作品における叙情的な側面を、自らのスタイルで浮き彫りにして見せる。20日のリサイタルがいよいよ楽しみになる。
後半はメンデルスゾーンの「夏の夜の夢」全曲。メルクルがN響から不思議な透明感を持った音色を引き出した。1階席で聴いた範囲では低音がかなり強く響いており、そのため音楽がやや重いイメージになっていたが、それでも音色は明晰で、各声部がはっきりと聞こえ、メンデルスゾーンの音楽が持つ精妙な音の綾が多彩に繰り広げられるのには感心した。
序曲で、スケルツァンドな木管や弦の向こう側から、やや音を割ったホルンがすこぶる鮮烈な音で響く。面白い感じだった。
この演奏を聴いていて、ハタと思い当たったのが、プロコフィエフの「炎の天使」の悪霊が跳梁する場面で、飛び交う弦の中にホルンが短く鋭く何度も咆哮する音楽だ。あれはまさしくこの「夏の夜の夢」の精霊の音楽からヒントを得たものではないかと。
ただ今日の演奏は、いわゆる夢幻的な、妖精的な音楽の面白さを味わうという面になると、果たしてどうだろうか? 合唱(東京音大)とソリ(半田美和子、加納悦子)も、軽快な美しさという点では、先日水戸で小澤征爾の指揮で聴いた東京オペラシンガーズと中嶋彰子他の歌唱に一歩を譲るだろう。
ナレーターは中井貴恵が担当した。やや演劇調だが、悪くない。
彼女のせいではないが、「序曲」のあとにシェイクスピアの原作について「聴いていただきましょう」(とは言わなかったが)的な「解説」を彼女に喋らせたのは、いかにも「NHKの放送」的センス。音楽と物語のロマンティックな雰囲気のバランスを、見事にぶち壊してしまう。
前半がジャン・フレデリック・ヌーブルジェをソリストに迎えたベートーヴェンの「ピアノ協奏曲第1番」。この若い(23歳)ピアニストは近来屈指の注目株だ。ベートーヴェンの若い作品における叙情的な側面を、自らのスタイルで浮き彫りにして見せる。20日のリサイタルがいよいよ楽しみになる。
後半はメンデルスゾーンの「夏の夜の夢」全曲。メルクルがN響から不思議な透明感を持った音色を引き出した。1階席で聴いた範囲では低音がかなり強く響いており、そのため音楽がやや重いイメージになっていたが、それでも音色は明晰で、各声部がはっきりと聞こえ、メンデルスゾーンの音楽が持つ精妙な音の綾が多彩に繰り広げられるのには感心した。
序曲で、スケルツァンドな木管や弦の向こう側から、やや音を割ったホルンがすこぶる鮮烈な音で響く。面白い感じだった。
この演奏を聴いていて、ハタと思い当たったのが、プロコフィエフの「炎の天使」の悪霊が跳梁する場面で、飛び交う弦の中にホルンが短く鋭く何度も咆哮する音楽だ。あれはまさしくこの「夏の夜の夢」の精霊の音楽からヒントを得たものではないかと。
ただ今日の演奏は、いわゆる夢幻的な、妖精的な音楽の面白さを味わうという面になると、果たしてどうだろうか? 合唱(東京音大)とソリ(半田美和子、加納悦子)も、軽快な美しさという点では、先日水戸で小澤征爾の指揮で聴いた東京オペラシンガーズと中嶋彰子他の歌唱に一歩を譲るだろう。
ナレーターは中井貴恵が担当した。やや演劇調だが、悪くない。
彼女のせいではないが、「序曲」のあとにシェイクスピアの原作について「聴いていただきましょう」(とは言わなかったが)的な「解説」を彼女に喋らせたのは、いかにも「NHKの放送」的センス。音楽と物語のロマンティックな雰囲気のバランスを、見事にぶち壊してしまう。