2008-05

5・5(月)新国立劇場 新制作 ツィンマーマン:「軍人たち」

  新国立劇場

 若杉弘芸術監督が面目を賭けた、ベルント・アロイス・ツィンマーマンの「軍人たち」がついにハウス・プレミエされた。ドレスデン・オペラのオリジナル制作にもとづくネーデルランド・オペラ版からのレンタル上演だが、これはきわめて価値ある日本初演である。
 脇役の日本人歌手陣をはじめ、合唱団がよくあそこまでやったものだ。演技というよりは舞踊といった方が当っているかもしれないが、演出に人を得ればこれだけの水準の舞台が創れるのだということが、ここでも立証されたといえよう。

 その演出はウィリー・デッカー、再演演出がマイシェル・バルバラ・フンメル。舞台美術と衣装がヴォルフガング・グスマン、照明がフリーデヴァルト・デーゲン。
 舞台幅一杯に長方形の箱型内舞台が、やや高い位置に設定されている。
 軍人たちはすべてスキンヘッドで赤服という画一的な姿。彼らを含め登場人物は全員が白塗りの顔。大道具は他に無く、小道具もほとんど無い。巨大な箱の中で繰り広げられる人物たちのマリオネットのような動きは、実に強烈かつ精妙だ。
 ただその一方、たとえばラストシーンでPAにより拡大された軍靴の響きや喧騒といったものに象徴される生々しい人間の「業」のようなものが、著しく抽象化されてしまった印象は否めまい。したがって、物語が持つリアルなどぎつさには不足する。もっともこれはあくまで演出スタイルの選択肢だから、あれこれ言ったところで、所詮は好みの問題になろう。しかしこのような舞台は、時にやや単調に感じられることがある。

 主役陣は、娼婦に身を持ち崩すマリーをヴィクトリア・ルキアネッツが体当たり的に熱演。彼女を愛するシュトルツィウスを歌ったクラウディオ・オテッリが、今回は予想外に良かった。デポルトのピーター・ホーレも安定している。その他脇役たちと合唱(新国立劇場合唱団)も、音楽的にも演技的にも優れたものを示していた。
 東京フィルは若杉の指揮の下で今回は珍しく豪快に鳴り渡った。金管がのべつ唸り、咆哮するようなこの曲では、アンサンブルもクソもないといった感じだが、とりあえずパワーは讃えておこう。これらをまとめた若杉の力量も、長年にわたりオペラに情熱を燃やしてきた彼の本領と言うべく、見事なものであった。

 やたら高音域の声を使い、四六時中絶叫しているという感じのドイツ現代オペラ特有の嫌らしさには辟易するけれど、重量感充分のあざとい個性を持つ「軍人たち」。このオペラをナマで聴けたことはうれしかった。
   

«  | HOME |  »

最近の記事

お知らせ

4・11(金)ラドミル・エリシュカ指揮 札幌交響楽団を更新しました。(4/23)
3・13(木)ジャナンドレア・ノセダ指揮BBCフィルハーモニックを更新しました。(4/18)
2・29(金)クリスティアン・アルミンク指揮新日本フィルを更新しました。(4/18)
●3・15〜3・20 旅行日記をアップロードしました。(3/25)

カテゴリー

全記事表示

全ての記事を表示する

RSSフィード

ブログ内検索

プロフィール

リンク

Since
September 13, 2007

Visitors