2008-03

3・13(木)ジャナンドレア・ノセダ指揮BBCフィルハーモニック

  サントリーホール

 以前ほどではないにせよ、ノセダの指揮の身振りは相変わらず猛烈である。しかしそれにもかかわらず、たとえば「悲愴交響曲」など、響きがかなり抑制されている。この不思議な対比が面白い。
 思うにノセダは、このオーケストラを完全に把握して、自己の意図を徹底できる段階にまで来ているのだろう。その「悲愴」は、第4楽章にいたってそれまでの抑制から一気に解放された如く、存分に甘美な哀愁を歌い上げる。激しい慟哭ではなく、優しい悲しみにすすり泣き、ため息をつくような演奏である。きわめてユニークな解釈だ。4つの楽章をあまり間をおかずに続けて演奏するのは、ゲルギエフの影響か?

 最初のストラヴィンスキーの「妖精の口づけ」からの「ディヴェルティメント」は、大編成で演奏された。これも、新古典主義作風の作品に対するアプローチとしてはユニークだ。おそらくノセダは、この作曲家をロシア生まれの、リムスキーコルサコフの弟子としての視点から解釈して(これもゲルギエフと同じ路線だ)、ストラヴィンスキーの精神的ルーツを掘り起こそうと試みたのではあるまいか。

 上記2曲の間には、ヒラリー・ハーンが弾くシベリウスのヴァイオリン協奏曲。強靭な音色、並外れた集中力と緊迫感。どんな指揮者とオーケストラとの協演であろうと、主役となるべき強烈な個性である。すごい女性だ。
    「音楽の友」5月号(4月18日発売)演奏会評

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