2008-02

2・6(水)新国立劇場 R・シュトラウス:「サロメ」

  新国立劇場

 新国立劇場の、8年来の定番プロダクション。観るのもこれが3回目になる。
 巨大な天幕を中央に、前面に井戸を置いたヨルク・ツィンマーマンの舞台美術と衣装も、すでにおなじみだ。

 ヴォルフガング・シュミットのヘロデ王、小山由美のヘロディアス王妃、ジョン・ヴェーグナーの預言者ヨハナーン、いずれも堂に入った歌いぶりで、安心して聴いていられる。水口聡の衛兵隊長ナラボート、山下牧子の小姓も手堅い。王女サロメはサンクトペテルブルク出身のナターリャ・ウシャコワが歌った。やや硬質だが、神経質で偏執的な少女として性格を描き出す、という点では成功していたであろう。トーマス・レスナーが指揮する東京響は猛然と鳴り響いたが、打楽器などには少々荒っぽいところもある。

 ストレートで解りやすいこの演出は、アウグスト・エファーディングのものだ。脇役や黙役にいたるまで人物の演技が徹底しているのも特徴である。兵士たちや奴隷たち(配役表には「助演」として載っている)の動きは主役以上に細密で精妙であり、これが舞台を引き締めるのにどれだけ貢献しているかは測り知れない。このようなオーソドックスな演出では、それが何より重要なポイントになってくるのである。

 助演といえば、私が常々素晴らしい俳優として讃嘆している原純(はら・じゅん)が、今回も「儀典長」として出演しているのがうれしかった。この役はもちろん黙役だから、演出上で生み出された役柄に過ぎないが、ターバンを巻いて常にヘロデ王の傍に佇立、王の感情をいち早く読み取って奴隷たちに合図し酒を運ばせるなどの役割を持っている。これを実に派手な身振りで演じていたのが、彼なのである。
 彼の演技にはノヴォラツスキー前監督も注目していて、なにかにつけ「あのボーイにやらせよう」と言っていたそうだ。新国立劇場で私が観たものでは他に、「ラ・ボエーム」第2幕で図々しく出しゃばるカフェの給仕、「ばらの騎士」第1幕でテノール歌手の歌のうるささに顔をしかめながら元帥夫人の髪を整える髪結師の役などもあった。昨年の「タンホイザー」第2幕では、ビーテロルフの従者としてほんの数秒程度の見せ場だったが、一大事とばかり血相変えて主人のもとへ剣を届けに走って来る演技など、笑い出したくなるほどのコミカルな迫力を感じさせたものである。
 新国立劇場以外でも、アルミンクと新日本フィルの「火刑台上のジャンヌ・ダルク」で、ジャンヌにまといつく悪魔のようなキャラクターを演じていた(あれは少し浮いていたかも)。
 こういう、巧妙な脇役の演技を眺めるのも、オペラや芝居の醍醐味というものであろう。

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