2008-01

1・8(火)ヒュー・ウルフ指揮 読売日本交響楽団

  サントリーホール

 ウルフは、松葉杖をついてステージに現われた。なんでも自宅で足を骨折したとかいう話だ。よく日本に来られたものである。舞台の出入りの姿が痛々しいため、客席にはざわめきと緊張が拡がったが、響き始めたモーツァルトの「交響曲第28番」は、実に毅然として引き締まった音であった。

 がっしりと組み立てられて歯切れよく、時に剛直なほどの力強さを示し、しかも明晰な音色で満たされたスタイルのモーツァルトは、かつてのジェフリー・テイトのそれにも似ている。そのあたりは私も非常に好きなタイプだから、ウルフもいよいよ一皮向けてきたか、と最初の数小節はそう思って聴き始めたのだが、ただ、そのあとは必ずしも期待が満たされたわけでもない。

 ウルフの音楽は、昔も今も、良くも悪くも生真面目すぎるのである。細部まで神経を行き届かせた音楽づくりには優れたものもあるのだが、それが生き生きとしなやかに躍動するといった趣きに不足するのが難点だ。最後の「ジュピター交響曲」でも、遅いテンポの部分や、パウゼの多い箇所になると途端に緊迫度が希薄になるという癖がある。とはいえ、真ん中におかれた「ピアノ協奏曲第22番」では、オーケストラの緻密で厚いハーモニーの美しさが生きていて、聴きごたえがあった。
 15日の定期では、彼はショスタコーヴィチの「交響曲第11番」を振る。結論は、そちらの方を聴いてからにしよう。

 ピアノのソロは、フィンランドの出身のアンティ・シーララ。若いに似合わず淡々とした表情で、かなり自由なテンポでモノローグのように弾き続ける。不思議なピアニストだ。15日には彼もバルトークの協奏曲を弾くそうだから、異なる面を確かめてみよう。

 暮の「第9」以来2週間ぶりに聴くナマの演奏会。やはりいいものである。

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