2007-09

9・24(月)マティアス・ゲルネ/シューベルト:白鳥の歌

  東京オペラシティコンサートホール

 ベートーヴェンの「遥かなる恋人に寄す」を導入として「白鳥の歌」に移り、レルシュターブの詩による歌曲8曲(第5曲のあとに「秋」を挿入)が歌われて休憩、というめずらしい構成。そして後半が「アトラス」から「影法師」までの、ハイネの詩による6曲。ザイドルの「鳩の使い」は、予想どおりアンコール曲として扱われた。

 ゲルネは、シューベルトでは今日はやや抑制気味に歌い、かつ各曲それぞれの異なった性格を浮き彫りにした。明らかにこれは、一貫したストーリイを持つ二つの歌曲集との対比を描き出すためである。めずらしく正面を向いて歌うこともあったが、それは「セレナード」のような落ち着いた曲想の時だ。「遠い地で」のようにゆっくりしたテンポの曲で示される彼の最強音は凄味をさえ感じさせるし、ベートーヴェンの第6曲でのように気分が明るく高揚する個所などは、まさにその圧倒的な声が迫力をみなぎらせる。「春の憧れ」と「別れ」では各2節を省略したが、これは要するに譜面上ではリピートを省略して歌ったということ。

 シュマルツのピアノは前2回と同様、和声を柔らかく溶け合うように響かせ、ゲルネの声楽パートに添う。歌を浮かび上がらせる一方で歌と調和するところなど、巧いものだとは思うが、シューベルトの歌曲では、それだけでは役目を果たせない。特にピアノが最弱音で音楽を進める個所での緊迫感の希少さは覆うべくもなく、「海辺にて」と「影法師」ではその弱点が露呈した。ゲルネの力唱にもかかわらず、感銘を半減させてしまったのは、そのためである。惜しまれる幕切れであった。
 「音楽の友」11月号演奏会評

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