2007-09

9・21(金)マティアス・ゲルネ/シューベルト「冬の旅」

 東京オペラシティコンサートホール

 一昨日より肩の力を抜いた歌い方、という言い方が正しくなければ、向う見ずで純真すぎる若者の世界を過ぎて、やや人生経験を積んだ複雑な青年の心理の世界に入った表現になっている、という感じだろうか。
 全曲を通じ、怒りに燃える激しい感情と、立ち止まって思い悩む感情とが交錯する。この、音楽の上では強烈なデュナミークの対比、詩の上では感情の起伏の激しい対比、という表現は、彼の師フィッシャー=ディースカウとシュワルツコップから受け継いだものであろう。
 が、ゲルネの特徴は、それらを詩の発音で際立たせるのでなく、たとえば一つの旋律線、一つのフレーズの起伏で行なうところにある。詩を語る名手であった2人の師に対し、ゲルネはその精神を包括しつつ、あくまで歌手としての立場を貫く。第20曲の「道しるべ」以降、主人公の心はいよいよ深淵に沈んで行くが、詩が沈むのではなく、音楽が沈む。声とピアノ(シュマルツ)とは、ここでも完璧な和声的調和を形づくっていた。ただしピアノは、今夜は少々調子が悪かったようだ。
 「音楽の友」11月号演奏会評

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