2007-09

9・13(木)クリスティアン・アルミンク指揮新日本フィル

 サントリーホール

 このコンビのマーラー交響曲チクルスも回を重ねて、今日は第7番「夜の歌」。

 氷の炎のようなマーラーがアルミンクの本領とも言えようが、この「夜の歌」の演奏もなかなか面白い。
 全演奏時間約83分、ということは、楽章間を別としても、かなりの遅いテンポを採ったことになる。しかもアルミンクは中間3楽章における音量も抑制気味にして、じっくりと精妙な、かつ豊麗な響きを創り、この曲の叙情的な側面を浮き彫りにした。両端楽章でも、決して殊更に音楽を煽りたてたりはしない。むしろ余裕をもって、たっぷりと歌いあげていくという音楽だ。

 狂暴な第6交響曲「悲劇的」と、不自然に昂揚した第8交響曲「千人の交響曲」との間に位置するこの「夜の歌」が、いかに謎めいた作品であるかは、昔から夙に指摘されてきた通りである。事実、演奏によっては、最終楽章を除く4つの楽章には不思議に怪奇な、ミステリアスな雰囲気があふれることが多い。
 しかし、この日のアルミンクと新日本フィルの演奏には、そんな神秘的で怪奇なイメージは、全く備わっていない。それよりもこの演奏は、まるであの「6番」の怒号と絶叫を書いたあとにすっかり疲れ切ってしまったマーラーが、求めて白夜的な静寂の中に逍遥しているかのようなイメージさえ創り出す。そのどこか醒めたような、感傷的でない叙情性が、逆にマーラーが突然陥った虚無的な精神状態のようなものを想像させ、白々とした凄味を感じさせるのである。フィナーレでマーラーは夢から覚めたように気を取り直すことになるわけだが、今回の演奏は、そこにも夢の名残が感じられるようであった。

 一般のマーラー演奏とは大きく傾向を異にするアルミンクのこのアプローチは、すこぶる興味深い。金管の演奏がいつものように引き締まっていたら、もっと印象も強くなっただろう。優しいけれども一種の緊張をともなう第4楽章までの間に、ほぼ満員の若い聴衆が示していた集中力も、また驚くべきものがあった。

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