2019-12

2017・11・11(土)ブロムシュテット指揮ゲヴァントハウス管弦楽団

      サントリーホール  3時

 ヘルベルト・ブロムシュテットは90歳。だが相変わらず元気だ。歩行もしっかりしているし、指揮台では椅子など使わない。何より、オーケストラから引き出す音楽が、壮者を凌ぐエネルギーに満ちている。

 休憩後に指揮したシューベルトの交響曲「ザ・グレイト」では、全ての反復指定を遵守した長丁場を、速めのテンポと、荒々しいほど強靭なデュナミークを駆使して、些かの緩みもなく指揮して行った(リピートをすべて守りながら、全曲の演奏時間が63分にとどまっていたというのは、相当速いテンポだった証拠だろう)。演奏に湛えられた滋味という点ひとつ取ってみても、この人はやはり、ドイツの老舗オーケストラを指揮した時の方が、最も良さを発揮するようである━━というのは、私の独断的な印象なのだが。

 しかし、この日の大きな驚きは、前半に演奏されたブラームスの「ヴァイオリン協奏曲」である。あの異様に遅く沈潜した、粘ったテンポは、ソリストのレオニダス・カヴァコスの選択か、それともブロムシュテットの意図か。

 カヴァコスのソロは、いつものように骨太で強靭で、しかも陰翳の濃い表情で、この協奏曲をいっそう深みのある、思索的なものにしていたが、今にも停まってしまうかと思えるようなあの遅いテンポ(第1楽章だけで25分、第2楽章10分、第3楽章9分━━正確ではないかもしれないが、大体そんなところだろう。最初の2つの楽章は、CDに入っているケネディとテンシュテットの方がもっと遅いだろうが)は、それが一分の緩みもなかっただけに、凄まじい緊張感で聴き手をねじ伏せる。
 これまでは切れ味のいい、斬り込むような演奏が身上だと思っていたカヴァコスが、こんな沈潜した凄味のある音楽を聴かせてくれるとは、全く予想外であった。だがその演奏が、少しも奇を衒ったものでなく、あくまで真っ向勝負のものだけに、説得力がある。

 しかもブロムシュテットとゲヴァントハウス管弦楽団が、そのカヴァコスの演奏を揺るぎなく、どっしりと、これまた一分の弛みもなく支え、更なる深淵へ煽り立てて行くのだからますます凄い。第1楽章終りでの最強音の和音の反復など、これほど変化に富んで意味深く演奏されていた例を、私は初めて聴いた。

 とにかく、その演奏には完全に引き込まれたが、聴き終った瞬間にはヘトヘトになっていた、というのが正直なところである━━ただし快さのある疲労感ではあったが。
 しかもカヴァコスはそのあとに、バッハの「パルティータ第2番」の「サラバンド」をアンコールとして弾いた。これまた強い、いい意味での粘着力に満ちていた。これで、更にヘトヘトになった。
      別稿 音楽の友新年号 演奏会評

コメント

とにかくオケのテンションの高さが気になったけど指揮者との信頼感はすざましくすみずみまで鳴りきってました。カバァコスはこれからの時代の演奏を感じさせます。後半のシューベルトは鋭い切れとパワーはとても90歳とは信じ難いです。全楽章良かったですがとくに3楽章の音楽がみずから歌う様なナチュラルさには目頭が熱くなりました。名古屋から行った甲斐がありました。

前監督の影

今回は横浜を嫌って、六本木のブルックナーにしました。
当日のメンデルスゾーンの独特な節廻しを聴いて、ブラームスのコンチェルトを聞きたくなり、このコンサートを外したのを後悔しました。
私はシャイーを容認する者では有りませんが、今回の力量密度が高いオーケストラ演奏は、前監督の実績が90%を越えていると考えました。 ブルックナー7番は、前半の二つの楽章で音楽を満足させるものであり、後半はコーダまではオマケのお楽しみと思えますが、弦がやたらと騒がしく1・2楽章が楽しめず、3・4楽章に新しい場面を多く聴いて楽しみました。 シューベルトもそんな要因ではないでしょうか。 あくまでゲバントハウスで、プロムシュテットが良いとは思えません。
それにしても、安い席を買えたのに、横浜を嫌ってしまったのは残念です。

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