2020-04

11・19(月)マイケル・ティルソン・トーマス指揮サンフランシスコ交響楽団

   サントリーホール  7時

 マイケル・ティルソン・トーマス(以下MTT)とサンフランシスコ交響楽団は、1997年10月に来日したことがある。それは彼がこのオケの音楽監督に就任して3シーズン目に入った時のことだった。
 その頃、彼はPMFの芸術監督をも務めていた。当時やはりPMFで活躍していた佐渡裕は、MTTの指揮を「新鮮なフルーツをスパーッと切り、酸っぱいシブキがビャーッと飛ぶような感じ」と表現したものであった。
 今回は従って、コンビとしては実に15年ぶりの来日である。

 MTTも、来月には68歳になるはずだが、指揮にはまだ若々しい雰囲気があふれている。オーケストラも実にいい音を出しているし、いい演奏をしている。両者の関係は良好なのだろう(内情などは知らない)。
 今夜のプログラムは、ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」と、マーラーの「第5交響曲」。

 ラフマニノフが始まった瞬間、冒頭のリズムが歯切れ良く、演奏にも実に見事な勢いがあるのを聴いて、昔のMTTそのままだな、という気がしてうれしくなる。
 マーラーにおける明晰な響き、バランスを決して崩すことのない音の構築なども、MTTがロンドン響との演奏でも聴かせていた特徴だ。熱狂しながらもどこかに冷静さを保っている音楽づくりも、彼一流のもの。第5楽章の狂瀾怒涛ともいうべき終結においてさえ、彼は整然たる正確な形を決して崩さない。

 第4楽章の有名な「アダージェット」での、冴えた弦楽器群の音色と、澄んだ叙情美もいい。
 それに、オケのソロ――特にトランペットとホルンの巧いこと。いかにもアメリカのオケらしい滑らかな音色もあふれて、このオーケストラは相変わらず好調のようである。

 ラフマニノフでピアノ・ソロを弾いたのは、このところ人気の高い若手の女性、ユジャ・ワン(王羽佳)だった。精悍な感じを与える容姿にふさわしく、ひたすら突き進むエネルギーにあふれた演奏は、胸のすくような素晴らしさだ。
 大きく裾の開いたドレスのため、前列に座っていた男性のお客さんは、気が散って演奏を聴くどころではなかったという話だが、・・・・まあ、前列でなくてもそうでしょう(オジサンたちはすぐこうだから困りますな)。

 ラフマニノフのあとのソロ・アンコールで、MTTもピアノの前に座って協演したプーランクの「連弾ソナタ」第3楽章が、闊達な演奏で面白かった。
 彼女の猛烈に素早い動きのお辞儀をMTTが真似したのには場内大爆笑だったが、そのあと何度目かの答礼では、彼女がスピーディなお辞儀をしてふと頭を上げると、隣でMTTがまだ深々と低頭しているのに気づいた彼女が急いでまた頭を下げる、といったようなシーンもあった。まるで仲の良い父娘の協演のよう。微笑ましい。

※アンコール、会場の発表に釣られ「第1楽章」などと書いてしまいました。しかも訂正するのを忘れており、失礼しました。コメントでのご指摘、恐縮です。

コメント

東条先生こんにちは。私も気が散りました。(笑) さて、アンコールですが、1楽章ではなく、3楽章だと思います。1楽章と掲示されていてなんとなく違和感を覚え、自宅で確認したところ、3楽章でした。但し、私の持っているロジェの演奏とは全く違った曲にも聞こえましたが、これはライブでしかもアンコールの高揚のもたらせる効果でしょう。

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