2020-05

11・17(土)ネオ・オペラ「マダム・バタフライX」

   KAAT神奈川芸術劇場(ホール)  3時

 宮本亜門の演出には少なからず興味を持っているので、今回も観に出かけた。
 彼が構成・演出したネオ・オペラ「マダム・バタフライX(エックスと読む)」なるこれは、プッチーニの「蝶々夫人」をもとに、「オペラ的演劇」の未来を考える試み――またはオペラと演劇との融合の試みとして制作されたもの。その試み自体は、非常に有意義なものだと思う。

 今回は、オペラの演奏がテレビ・スタジオでビデオ収録されるという設定に仕立てられており、登場人物は、蝶々さん(嘉目真木子)、ピンカートン(与儀巧)、シャープレス(大沼徹)、スズキ(田村由貴江)、ゴロー(吉田伸昭)、ケイト(鈴木純子)の5人のみにしぼられ、その範囲内でオペラが進行する。合唱や、その他の脇役は出て来ない。
 従って音楽も、彼らが歌う場面のみが抜粋されることになるが、それを止めたり飛ばしたりするのはテレビ・ディレクター(柳橋朋典)のキューで尤もらしく行なわれるという具合だ(巧いアイディアですね)。

 オペラの演奏の間には、スポンサーの無理解に頭を抱えるチーフ・プロデューサー(神農直隆)と、番組制作に情熱を燃やす女性プロデューサー(内田淳子)による演劇パートが絡む。
 オーケストラ・パートは、ピアノ2、ヴァイオリン・トロンボーン・パーカッション各1に編曲(山下康介)されている。

 という段取りだが、さて――。
 前出の「女性プロデューサー」が、私生活では離婚協議中、しかも彼女の息子が蝶々さんの子供役を演じる、という設定が初めの方で明らかにされれば、ははァこの演出の落しどころは、その「親権問題」だな、と容易に見当がつくだろう。
 それはよろしい。だが、その親権に苦しみ、オペラの物語に身をつまされる女性プロデューサーの芝居はステージの脇の方で(控え目に)進められ、最後も彼女がその子をひしと抱きしめるだけで終り、一方オペラの方は、最後までオリジナルのストーリー通りに進められて終る・・・・というのでは、何だそれだけか、と拍子抜けしてしまう。

 私はもっと、この女性プロデューサーの私生活での親権をめぐる怒りがオペラの演出にまで影響を及ぼし、オペラの舞台が思いもかけぬ方向に展開してしまうような手法が採られるのではないか、という期待を持っていたのだが・・・・。
 思うに亜門先生、よほどプッチーニの作品に遠慮したのか、それとも最近の御多忙のために掘り下げの時間がなかったのですかな? 

 いや、智略縦横の宮本亜門なら、なぜ強引にこの「演劇」をオペラの領域に割って入らせ、今話題の「国際結婚の破綻の場合、どちらが子供を引き取るか」の問題にまでテーマを拡げなかったのかな、と思う。東京文化会館での二期会公演でならいざ知らず、自ら芸術監督を務める神奈川芸術劇場(KAAT)の公演ならば、何の遠慮も要らぬはず。
 たとえばかりに、ここでペーター・コンヴィチュニーのやり方をパクって、演奏を中断し、登場人物たちが「この問題についてみんなどう思う?」という議論を始めたとしても、そう大きな文句は来ないのではないかとも思うのだけれども・・・・(来たら来たでいいじゃありませんか)。

 蝶々さんを歌った嘉目真木子が素晴らしい。今年の東京音楽コンクールで最高位になり、すでに3年前から二期会など多くのオペラで活躍している若い人だ。
 ピアノは極めて達者だったが、編曲は少々乱暴なところがある。
 仕切り板の他には何にもない舞台を、庭や部屋の背景を加えた「テレビ映像」に変えて大きなスクリーンに投影する手法は大いに結構だろう――蝶々さんの「部屋」が、妙にあばら家みたいに見えたのは可笑しかったが。

コメント

ですよね

東条さんの私情も含めて、とにかく目に見えるよう、手に取るようにわかります !
面白かったです。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://concertdiary.blog118.fc2.com/tb.php/1521-6b64225c
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

«  | HOME |  »

























Since
September 13, 2007

これまでの来訪者数

ブログ内検索

お知らせ

●2007年8月以前のArchivesを順次、アップロード中です。併せてご覧下さい。
2007年8月
2007年7月
2007年6月
2007年5月
2007年4月
2007年3月
2006年8月
2006年7月
2006年4月
2006年3月
2005年12月
2005年8月
2005年4月
2005年3月
2004年4月

最近の記事

Category

プロフィール

リンク

News   

雑誌 モーストリー・クラシック に連載中
「東条碩夫の音楽巡礼記」